今日は久々のデート。
部活が忙しくて、こういう機会はなかなか作れない。
だから、一緒にいれる時間を減らしてしまわないように、約束より早めに来た。
・・・・・・うん、さすがに一時間前は早すぎたか!
でも、日吉を待ってる時間も、結構好きだったりする。
日吉はいつ来るかなーとか。きっと日吉もいつも通り、早めに来るんだろうなーとか。今日はどんな服装かなーとか。
いろいろ日吉のことを考えてる内に、あーやっぱり日吉のこと好きだなー、なんて思いがどんどん積み重なる。
そうすると、今日のデートが一層楽しみになる。
まずい・・・・・・。口元が緩みまくってるのを止められない・・・・・・!
「スミマセン。」
「あ、はい!」
声をかけられて、我に返る。
・・・・・・まあ、声をかけられるぐらいだから、変な顔はしてなかったってことかな・・・・・・。
なんてことも過りつつ、あらためて、声をかけてきた男性を見る。
その人の後ろにいる二人の男性もこっちを見てるってことは、お友達かな。
「ココに行きたいのデスが・・・・・・。」
そう言いながら、男性がパンフレットのような物を広げる。
・・・・・・そういえば。言葉もどこか片言だし・・・・・・観光客かな?
なら、わかりやすく説明しないと・・・・・・。まずは、ここがどの辺りなのかを指し示した方がいいよね!
と考えて、パンフレットを覗き見た・・・・・・ら。
「あ・・・・・・れ?」
そのパンフレットに今現在の場所は載っていなかった。
「えーっと・・・・・・。」
それをわかりやすく伝えるには、どうすれば・・・・・・と考えすぎて、上手く言葉が出てこない。
「ちょ、ちょっと待ってくださいね・・・・・・!」
焦れば焦るほど、全く頭が働かない。
あー、落ち着いて、落ち着いて!
「どうかしましたか?」
「あ、日吉・・・・・・!!」
自分で自分を追いつめてしまっていると、日吉がやって来た。
救世主・・・・・・!!
「あの、この人たちがここに行きたいらしいんだけど・・・・・・。」
「なるほど・・・・・・。今、自分たちがいる場所は、パンフレットには載っていませんが、大体この辺りです。」
「そうなのデスか!」
「この道路沿いに歩いて、信号が見えたら、右に曲がってください。それが、パンフレットで言う、この道ですので、あとはパンフレット通りに進めばわかるかと思います。」
「オォ!ありがとうゴザイマス!」
「ちなみに、パンフレットに載っているこの道は、上り坂になっているので、それを道しるべにするといいかもしれません。」
「わかりました!アリガトウ!」
三人の男性は私にも会釈してくれ、慌てて私も返す。・・・・・・結局、役立たずでしたけどね!!ごめんなさい!
その人達を見送ると、先に日吉が口を開いた。
「悪い、待たせたな。」
「え?あ、ううん!全然!だって、まだ時間前だし。」
私がケータイの時計を見ると、日吉も自分の時計を確認した。
そして、日吉は訝しげに私を見る。
「・・・・・・お前、いつから来てたんだ?俺でも早すぎたかと思ってたんだが。」
「実は、約束より一時間も前に来ちゃいましたっ。」
「なんで、そんなに早く・・・・・・。」
「う〜ん・・・・・・。たぶん、日吉とのデートで舞い上がっちゃってたんだと思う。」
「今更だろ?」
「そうだけど、やっぱり楽しみなのは楽しみだし。」
「はぁ・・・・・・。その気持ちはありがたいが、早く来れば来るほど、俺を待っている間、面倒なことに巻き込まれる可能性も高くなるんだからな。これからは気をつけろよ。」
「わかった、ありがとう。」
今回は道を聞かれただけだったけど、何かの勧誘だったり、危ないことや怪しいことに関わってしまう可能性も無くはないもんね。
そこまで日吉が私を心配してくれて、素直に嬉しい。
・・・・・・っと、そうだ。
「あと、さっきは私の代わりに道案内してくれてありがとね。上手く説明しようと思ったら、ちょっとパニックになっちゃって・・・・・・。」
「別に・・・・・・。たとえパニックになってなくても、お前が上手く説明できたとは思えないしな。」
「失礼なっ!私だって、やる時はやるんだから!」
「ぜひ見てみたいものだな。」
「うわー、ものすごく馬鹿にされてる!」
とか、冗談を言い合ったりして、今日の目的地、映画館へと向かった。
カップルで見る、と言っても、残念ながらラブロマンス系ではなく。二人楽しく、アクションを見に来た。何でも、今回の作品は日吉が気になっていたものらしい。
さらに映画を楽しめるアイテム、ポップコーンと飲み物を買って、席に戻る途中・・・・・・。
「わっ!」
「ご、ごめんなさい!」
「すみません!」
「大丈夫ですか、って、あ!すぐ代わりの物、買って来ます・・・・・・!」
あっと言う間の出来事だったけど・・・・・・。
まず、私と男の人がぶつかり、そして、その衝撃で私が持っていたポップコーンが少し零れてしまったようだ。
それで、代わりを買って来る、ということは・・・・・・。
「ポップコーン、買いに行ってくださったのかな?」
「だろうな。」
「別に良かったのにね。」
「なら、今の間に席に戻っておくか?」
「それも悪いから、待つのは待つよ。」
「そうか。」
そんなやり取りをして、しばらくすると、さっきの男の人が急ぎ足で戻って来た。
その手には、やはりポップコーンがあった。
「ごめんなさい。はい、これ。」
「あ、いえ!そんな・・・・・・悪いです。」
「いやいや、悪くないですよ。僕がぶつかったんですから。それに、せっかく買って来たわけですし。嫌じゃなかったら受け取ってください。」
「・・・・・・では、遠慮なく。ありがとうございます。その代わりに、減った物でよければ、こちらをどうぞ。」
「いいんですか?」
「二つだと多すぎますしね。」
「では、ありがたく。ちなみに、ここの掃除はスタッフさんに頼んどきましたんで。」
「そうなんですか?何から何までありがとうございます!」
「いえいえ。それでは、映画楽しみましょうね!」
「はい!」
笑顔で別れ、やっと私たちの席に戻る。
「良かったね。さっきの人、優しくて。」
「そうだな。」
ポップコーンを手に取りながら、そう言ってみたけれど・・・・・・。あれ?どことなく、日吉の返答に棘があるような・・・・・・。
恐る恐る、日吉の顔色を窺う。
「日吉もポップコーン、食べる・・・・・・?」
掴んでいたポップコーンを差し出し、そう言うと・・・・・・。
「・・・・・・ああ。」
とだけ返ってきた。
・・・・・・良かった。どうやら私の気のせいだったみたい。
日吉の機嫌が悪かったら、絶対にもっと冷たく、要らない、とか言われてただろうしね。
「じゃあ、はい。あーん。」
「・・・・・・自分で食べる。」
「あ、そう?」
持ってた物を日吉の口元へ運ぼうとしたけど、断られてしまった。
う〜ん、残念。
でも、周りに人もいるわけだし、仕方ない。・・・・・・自分でやっておきながら何だけど。私だってちょっと恥ずかしいしね・・・・・・!
さて、映画は・・・・・・主人公が捕われたヒロインを助けに行く、というベタな内容ではあったけど、アクションに迫力があって、すごく面白かった!
あと、日吉もあんな風に戦えそう、とか考えてみたり・・・・・・。じゃあ、私を助けに来てくれるのかな?!それって、すごくカッコイイ!!惚れ直す!!
なんて、妄想もしてみたり。
映画館を出て、歩きながらそんな感想を・・・・・・言うわけにもいかないので、普通の感想を話した。
「アクション、すごかったね!」
「ああ、見に来た甲斐があった。」
「最後の方で、どんどん敵を倒しちゃうところとか!格好良かったよねー!」
「・・・・・・たしかに、あのシーンは見応えがあったな。」
「だよね!すっごい引き込まれて・・・・・・思わず、自分がヒロインの立場だったら?なんて考えちゃったもん。」
「・・・・・・お前はそういう見方をするのか。」
あ・・・・・・。結局、妄想を言っちゃってるようなもんか・・・・・・。
日吉も呆れてるのか、声のトーンが少し下がった。
でも、今更誤魔化しようもないしね・・・・・・。
「いやー、だって・・・・・・日吉も、ああいうこと、できそうでしょ?」
「俺が・・・・・・?」
「古武術とは違う、ってわかってるけど・・・・・・。でも!日吉が戦ってるところ想像したら、カッコイイなーって思って・・・・・・。それで、私を助けに来てくれたりしたら、もっとカッコイイなー、なんて・・・・・・。」
「・・・・・・そういうことか。」
声のトーンは戻ったみたいだけど・・・・・・。呆れた笑いが入ってたような・・・・・・。
いや、もういい!気にしない!
「また今度、別の映画も見に行きたいね!」
「次は別ジャンルにしてもいいかもな。」
「うん、それもいいね!日吉だったら、何がいい?」
「ホラー系。」
「あ・・・・・・そうだった・・・・・・。」
妙にニヤリとした表情だと思ったら・・・・・・そういうことか!
たしかに、日吉がそういうの好きだと知ってて、うっかりしてた私も私だけど・・・・・・。
「できれば、別の案でお願いしますっ。」
「そうやって避けるから、いつまで経っても慣れねぇんだよ。」
「いいよ、別に!怖い物に慣れたいとは思わないもん!」
「なら、俺はずっとお前で遊べる、ということか。」
「ヒドイ・・・・・・!」
なんて、楽しく言い合いながら、家に向かっていたら・・・・・・。
「すみません。」
「あ、はい。」
「これ、貴女の鞄から落ちたように見えたんですが・・・・・・。」
見覚えのある物を持った男の人に、声をかけられた。
・・・・・・あ、これって・・・・・・。
慌てて自分のバッグを確認すると、そこにあるはずの飾りが無い。
「すみません、ありがとうございます。私の物みたいです。」
「いえいえ。お話し中、お邪魔してしまったみたいで、すみません。」
「いえっ、そんな・・・・・・!拾ってくださって、ありがとうございました。」
もう一度お礼を言うと、男の人は爽やかに会釈して、去って行った。
「え〜っと・・・・・・何の話してたんっだっけ?」
「・・・・・・大したことは話してない。」
「そっ、か・・・・・・。」
日吉の返事は、どことなく素っ気なかった。
・・・・・・いつもそうだと言われれば、そうかもしれないけど。
それぐらいの、ほんのちょっとした変化だったから、変に意識せず話を続けることにした。
「あ、そうか。次は、どういう映画見に行こうか、とかって話してたんだったね。」
「そうだな。」
「じゃあ・・・・・・映画以外に行きたい所は?何かある?」
「映画以外・・・・・・お前は何かあるのか?」
「私?う〜ん・・・・・・私は日吉とだったら、どこでも楽しいと思うけど。そうだな〜・・・・・・。どこがいいかなー。」
「・・・・・・。」
「んー?」
「・・・・・・悪かった。」
「へ??」
なぜか日吉が突然謝り出し、思わず日吉を見上げる。
前を向いたままの日吉の横顔は、真剣な表情をしていた。
「俺も、基本的にはお前とならどこでもいいと思っている。」
「う、うん・・・・・・ありがとう。」
「だが・・・・・・いや、だからこそ、お前が他の男と話していると、いい気はしない。」
「そう、だね・・・・・・私も、せっかく日吉と一緒にいるんだから、日吉と話したいと思ってるよ?」
未だ日吉の真意が掴めないながらも、一応の返事をしてみる。
「は、今日のことも楽しみにしていた、と言ってくれた。だから、今みたいな返答をもらえることも、ある程度予測できる。まして、それらが嘘だとも思っていない。」
「うん、もちろん。むしろ、私の嘘なんて、日吉には通用しないしね。」
「・・・・・・だろうな。」
少し笑いながらそう返した後、日吉は目を閉じ、軽くため息を吐いた。
そして、私の方を見る。
「だから、お前は何も悪くない。それなのに、俺は今日、一人で勝手に何度も不愉快に思っていた。」
「・・・・・・何を?」
「さっきみたいに、他の男に話しかけられたりしていたことだ。」
本当に申し訳なさそうにしている日吉。
・・・・・・でも。それって・・・・・・、嫉妬ってことでしょ?
そんなことを言われて、嬉しくないわけがないんですけど!
「たしかに、ちょっと不機嫌かな?と思って、心配になったけど・・・・・・。」
「悪い。」
「ううん、全然謝る必要は無いって!こうやって説明してくれて、事情はよくわかったし!」
「そうか・・・・・・。」
安心したように、日吉は前を向いた。
・・・・・・そうだ!
「それじゃあ、さっきの話に戻るけど。今度は、どっちかの家に行く、っていうのはどう?」
「・・・・・・いいのか?」
「私はいいよ!まあ、私の家は何もないけど・・・・・・でも、その分、二人でゆっくりお話できるんじゃない?」
「なるほど・・・・・・。じゃあ、次は俺の家に来るか?」
「いいの!?」
「俺の家なら、怪談物のDVDなんかもあるしな。」
「あー、またそういうこと言う!」
そんな、ちょっぴり意地悪なところも。でも、本当は優しいところも。
だからこそ、ちゃんと謝ってくれたことも。そして、嫉妬してくれたことも。
結局、日吉のこと好きだなー、って気持ちが大きくなっていく要因になるだけ。
きっと、これからももっと好きになるんだろうなー、という自覚していたようでしていなかったことを再認識しながら、家路を歩いた。
すみません。
えーっと(苦笑)。これは、誕生日に作品をアップできなかったら困る!ということで、夏ごろに書き終え、置いておいたものです。つまり、これ以上、“誕生日にアップしても問題なさそうな話”ができなかった、ということですので、真っ先に謝りました(汗)。
いや、でも、せっかくの誕生日ですので、楽しくいきましょう!(笑)あらためて、お誕生日おめでとう、日吉くん!
ちなみに、これを書こうと思ったのは。友人と日吉くんの話をしていて、日吉くんって嫉妬が強いイメージだよなー、と思ったことがきっかけでした。
そんなわけで、些細なことで少し嫉妬してしまう、というお話でした。誕生日は一切関係なくてごめんなさい(苦笑)。
('13/12/05)